新規開拓営業とは売れる仕掛け作りの作業です

弊社がマーケティング活動のお手伝いをしている、システム開発会社4社のコンソーシアムがあるのですが、その事例を簡単にご紹介させていただきます。

最近の企業向け基幹システムの開発は、1からプログラム開発を行うのではなく、ビジネスプロセスの見直しを行いながら、ERP等のパッケージソリューションに業務を落とし込んで行く、というやり方が主流となっています。
そうなると、部門横断的なBPRの決断ができる方でなければ、導入の意思決定を下すことはできません。つまりそれは、システム開発会社が長年築き上げてきた、情報システム部門とのリレーションでは仕事を受注できなくなった、ということを意味します。
さらに、ソリューションの性格から考えれば、現場レベルの方と話をしていても、到底、埒の明くようなものではありません。
そこで、ターゲット企業の経営層の方に、直接アプローチする必要がありました。とはいえ、それは口で言うほど簡単ではありません。
まず最初にやらなければいけないのは、ターゲットのセレクトです。あたり前のことですが、どこの誰にコンタクトするのかを、バイネームで決める必要があります。通常は、データベースサービスを利用して名簿を手に入れるのが、一番手っ取り早いと思います。

なお、「○○部□△ご担当者様」などというDMを時々見かけますが、誰あてに来たのかも分からないようなDMなど、大半がゴミ箱直行になるのが目に見えていますから、そこにコストをかけないくらいなら、始めからやめておいた方がよいと思います。

さて、このケースでは、ターゲットとする業種と企業規模、あるいは本社所在地などによる絞り込みを行った上で、役員クラスの方、約2,000名の名簿を用意しました。

次に、相手に合わせたテーマ選びをしなければなりません。その方の所属や役職によって興味の対象は異なりますから、最もふさわしい話題を用意する必要があります。その際重要なのは、そこで扱うテーマと、こちらが売りたいものとが、ひも付けできる内容になっている、ということです。

ここでは、ITソリューションに基づいたBPRの提案をすることになるわけですから、経営戦略立案の要諦や、失敗を含む事例などをテーマとして用意し、戦略の裏付けとしての客観的なデータの重要性と、そのデータを分析するための、道具としてのITソリューションの有用性を訴えるような内容のものに仕立てました。
そのような段取りを経て、「まったく取引実績のない企業」の社長および役員クラスの方に「DMだけ」でご案内を行い、数回のセミナーを開催しました。

先に結論から申し上げると、平均申込率が5.28%実出席率が4.02%でした。通常、DMに対するレスポンス率は1〜2%と言われていますが、やり方次第では通常の倍以上の数字を得ることも可能だ、ということが言えると思います。

しかも、回を重ねるごとに出席者のクラスが上がり、60%以上の方が役員、30%程度が部門長クラス、そして必ず10%程度は社長、もしくは代表権を持つ方に出席していただけるようになりました。要は、部下の方に、「代わりに行って来い」と言って案内を渡すのではく、DMを受け取った本人が来場する割合が、回を追うごとに高まったということです。

また、もう一点強調したいのは、来場者の大半の方が、セミナーを主催した会社のことを知らなかったということです。さらに講師にも、決してテレビに出ているような有名人を招いたわけではありません。おそらくどの回でも、当日の講師のことを当初から知っていた、という方は、ほとんどいなかったと思います。

つまり、「知らない会社」が主催する「聞いたことのない講師」によるセミナーに、案内状を受け取った方の100人に5人が申し込みを行い、その中の4人は実際に来場し、大半の方が、アンケートにも答えた上で名刺も置いて行った、ということになります。

塩をまかれて門前払いになることもなく、また1本の電話をかけることもせずに、通常は、一営業担当者ではアポを取ることさえ難しい、まったく取引実績のない新規ユーザの社長、そして役員クラスの方々とのファースト・コンタクトに、いとも簡単に成功したのです。
この例は、「売りたいもの」が全社的なBPRを伴うようなITソリューションですから、簡単に成果を出せるようなものではないのですが、それでも数回のセミナーには、リピーターとして何度も足を運んでくれた社長や役員クラスの方が何人もいらっしゃいます。繰り返しますが、営業がアポイントを取ろうと思っても、まずたどり着くことのできない相手ばかりです。

そして、直近のセミナー・アンケートでは、91人の出席者中21名の方に「継続的な情報提供」を、また9名の方に「有益な提案」を希望していただくことができました。これらの方に対しては、アプローチの方法を間違えず、きちんとした“ドアオープナー”としての提案を用意することができれば、「会って話をする」ことができるはずです。

新規開拓営業に根性は必要ありません。電話でアポイントを取るための技術を磨いたり、受付突破のための方法を考えるような小手先のスキルも要らないのです。

今年は子年ですが、そのネズミのようにただチョコマカと動き回っても、望むような結果を得ることはできません。もう“足で稼ぐ”ような時代ではないのです。